相続の手引き⑫-数次相続・再転相続
【事例】 甲には配偶者A、子B、Cがいる。Bには配偶者Dとの間に子Eがいる。 甲が死亡した後、Bは甲の相続について熟慮期間内に承認も放棄もしないまま死亡した。 |
被相続人が死亡し、その相続が開始された(第一次相続)後、遺産分割未了の間に共同相続人の1人が死亡し、第二次相続が開始されるような場合を数次相続といいます。
数次相続の場合、死亡した共同相続人の地位をその相続人が当然に包括承継します。そのため、死亡した共同相続人(第一次相続人)の相続人が、第一次相続の遺産分割手続に加わることになります。
したがって、上記事例においては、甲の遺産分割手続は、A、Cのほか、Bの法定相続人であるD、Eを加えた4名で行うことになります。
また、第一次相続人が相続の承認も放棄もしないで熟慮期間内に死亡した場合、第一次相続人の相続人が第一次相続につき放棄・承認の選択をする地位も含めて、第一次相続人を相続します。これを再転相続といいます。
再転相続人は、第一次相続の承認・放棄、第二次相続の承認・放棄を、それぞれ各別に選択することができます(最判昭和63年6月21日家月41巻9号101頁)。
ただし、再転相続人が、第二次相続について相続放棄の申述を行った場合、たとえ先行して第一次相続の承認をしていたとしても、再転相続する権利を失うと解されています(前掲最判昭和63年6月21日)。
再転相続の場合、第一次相続についての熟慮期間は、再転相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時、すなわち、再転相続人が、第一次相続人が承認・放棄をしなかった第一次相続における相続人としての地位を、第一次相続人からの相続により自己が承継した事実を知った時から起算されます。
本事例に当てはめると、D・Eが再転相続人となり、D・Eは甲の相続及びBの相続について、承認・放棄を検討することができます。