相続の手引き㉔ 扶養型の寄与分

相続人が被相続人を扶養し、被相続人が生活費などの出資を免れたため財産が維持されたことにより寄与分が認められる場合があります。

例えば、生活費の援助(仕送り)や同居して被相続人の衣食住の面倒をみていたという場合です。

扶養型の寄与分が認められるためには、⑴扶養の必要性があること⑵扶養内容が被相続人との関係から通常期待されるような扶養義務の範囲を超えるものであること⑶被相続人の財産の維持・増加と寄与行為との間に因果関係があることが必要です。

⑴扶養の必要性

被相続人が、病気で療養している必要はありませんが、経済的に扶養を必要としていることが必要です。

⑵扶養内容が被相続人との関係から通常期待される扶養義務の範囲を超えること

配偶者には協力扶助義務(民法752条)、親族間には扶養義務(民法877条1項)及び相互扶助義務(民法730条)があります。

協力扶助義務は自身と同じ程度の生活を与える義務である一方、扶養義務・相互扶助義務は扶養する者に経済的な余裕がある場合に発生する最低限の生活を与える義務です。

そのため、配偶者の場合に特別の寄与と認められるためには、親族に過ぎない者に比べてより高い寄与が必要となります。

特別の寄与といえるためには、被相続人の経済状況、交付された金銭の額、寄与分を主張する者の扶養能力、無償制や継続性等を考慮し、通常期待される扶養義務の範囲を著しく超えるものである必要があります。

なお、扶養義務の範囲内であったとしても、他の共同相続人と分担するべきところを自己が負担すべき扶養義務の範囲を超えて扶養した場合には寄与分が認められる可能性がないわけではありません。

⑶相続財産の維持又は増加と寄与行為との間の因果関係

扶養がなされた場合、通常であれば被相続人は生活費などの出資を免れることになりますが、被相続人の財産状況など個別の事情によっては因果関係が認められない場合もあります。

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