相続の手引き㉟ 遺留分の基本⑴

遺留分制度とは、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の相続権を一定の法定相続人(遺留分権利者)に保障する制度です。

遺留分侵害額請求権とは、遺留分の侵害を受けている遺留分権利者およびその承継人が、受遺者及び受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる権利であって、権利を行使することによって初めて具体的な金銭請求権が発生します(民法1046条1項)。なお、請求権を行使に際し、遺留分権利者は必ずしも金額を明示する必要はありません。

次の事例において、BはAに対して遺留分侵害額請求権を行使した場合に、BはAに対していくらの支払を請求することができるでしょうか。

事例】

被相続人に相続人が配偶者A、子2人(B、C)がいる事案において、被相続人が死亡時の全財産(8100万円の預金)の全部をAに相続させる旨の遺言をして死亡しましたが、死亡時に400万円の借金がありました。

なお、被相続人は死亡する3年前にBに対して300万円を贈与していました。

⑴遺留分権利者

兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)です(民法1042条1項)。

Bは被相続人の子であるため、遺留分権利者です。

⑵遺留分算定の基礎となる財産の算定方法

遺留分の基礎となる財産の価額は、次の計算式によって算定されます。

(①被相続人が相続開始時に有していた財産の価額)+(②贈与財産の価額)-(③相続債務の全額)

そして、上記の②には、次のような贈与が含まれます。

ア 相続人以外の第三者に対する相続開始1年間以内にされた贈与(民法1044条1項前段)

イ 相続人に対して相続開始前10年以内にされたものであって、かつ、特別受益に該当する贈与(民法1044条3項)

ウ 当事者双方が遺留分権者に損害を与えることを知ってされた贈与(民法1044条1項)

エ 不相当な対価をもってした有償行為のうち当事者いずれもが遺留分権者に損害を与えることを知ってした行為(民法1045条2項)

本件では、遺留分の基礎となる財産の価額は8000万円(=①8100万円+②300万円-③400万円)となります。

(続く)

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