相続の手引き㊸-婚姻・養子縁組のための贈与
【事例】 被相続人Xは子Aの婚姻の際、挙式費用として60万円を支出した。 Xの遺産分割に当たって、Aの特別受益として取り扱うべきか。 |
婚姻若しくは養子縁組のための贈与は特別受益となります。そのため、例えば、親が子の婚姻に際して支度金、持参金といった名目で財産を贈与した場合には、当該贈与は将来の相続において、特別受益として持戻しの対象となります。
これに対して、挙式費用を親が支出した場合に、特別受益として持ち戻すべきでしょうか。これらについては見解が分かれています。親が挙式費用を支出する場合、婚姻に際する子への贈与というより、挙式に関して親自身が自らのために支出した費用であり特別受益とみるべきでないとの見解があります。また、挙式費用について特別受益該当性を否定した裁判例も存在します(京都地判平成10年9月11日判タ1008号213頁等)。そのため、挙式費用については、基本的には特別受益に該当しないと解するのが相当であると考えられます。