「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」 コンプライアンス経営の重要性3-株主代表訴訟のリスク-
株主代表訴訟とは、株主が会社に代わって、任務懈怠等によって会社に損害を与えた取締役等の会社役員に対し損害賠償を請求する訴訟です(会社法847条)。
取締役等の損害賠償責任が認められた場合、取締役等が賠償すべき相手は株主ではなく会社ですが、少数株主が経営陣を攻撃する有力な手段となります。
任務懈怠とは、取締役等がなすべき職務を怠ったことをいいます。典型例としては会社が遵守すべき法令(刑法、労働関係法、消費者関係法、各種業法等)に違反する業務執行をして会社に損害を与えた場合です(会社法423条1項)。また、取締役が会社法上の具体的な規定(取締役会専決事項、競業取引、利益相反取引等)に違反した場合も任務懈怠とみなされます。
中小企業では、会社経営陣が、会社資金と自己資金を混同する例や、自己が支配する別会社に有利な条件で取引をする例も存在します。このような会社の犠牲で自己又は第三者の利益を図る行為は、競業取引規制違反(会社法356条1項1号)、利益相反取引規制違反(同項2号3号)に該当し得るものもあって、任務懈怠として株主代表訴訟の対象となります。
また、取締役会設置会社においては、「重要な財産の処分又は譲受け」や「多額の借財」など重要事項については、代表取締役ではなく取締役会専決事項として取締役会で決定しなければなりません(会社法362条4項)。
ところが、中小企業ではこれが遵守されていない例が散見されます。М&A、グループ会社の支援など、その経営判断が取締役会専決事項であるにもかかわらず、取締役会決議を経ていない場合は、法令違反となるため、経営陣の責任が認められるリスクが大幅に増大します。
以上のとおり、法令違反の行為は、経営陣に対する株主代表訴訟リスクをもたらすのです。特に会社法の規定については、経営陣の意識が低いため注意が必要です。
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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」 コンプライアンス経営の重要性4-取締役等が負う第三者責任-