「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」会社法を遵守した株主総会12-株主総会の運営に関する留意事項②-
2 株主総会の当日運営(一括審議方式)の一般的な流れ
株主総会当日の運営は、受付→②開会宣言→③定足数の確認→④報告事項の報告→⑤決議事項に関する議案の上程・説明→⑥質疑(個別審議の場合は報告事項と個別の決議事項ごと)→⑦採決→⑧閉会が一般的な流れです。
対立する株主が参加する場合には、質疑で徒らに時間を費やさないために、すべての報告事項、決議事項を一括して審議する運営を検討するべきです。
3 典型的な株主総会の運営方法の違反
株主総会の運営に関する典型的な誤りを以下で説明します。
(1)委任状提出者の扱いの誤り
株主総会当日の受付対応においては、株主の代理人が委任状を持参して出頭した場合の扱いが問題となり得ます。
株主は、代理人により議決権を代理行使することが可能ですが、原則として代理権を書面で証明する必要があるため(会社法310条1項)、通常委任状を会社に提出します。
また中小企業では、定款上、「株主の代理人として議決権行使することができるのは株主に限る」旨が定められている場合が多く、この場合、原則として他の株主を代理人とする必要があります。
なお、法人株主の場合、本来は代表者が議決権を行使することになりますが、法人株主の役員や従業員を代行者として株主総会に出席させて議決権行使させることは、定款に代理人を株主に限る規定がある場合でも有効と解されています。その場合は、委任状がなくとも名刺や従業員としての資格の証明書等を提出させるのが一般的です。
ア 委任状を受付に持参した者への対応
委任状の形式や記載事項をチェックし、株主からの委任意思が明確であるか確認します。会社が、定款等や招集段階で代理権の証明方法を定めている場合は、その方式に従っているかを確認します。
また、定款等に定めがない場合には、代理人か否かを判断する方法は法定されていないため、通常は、株主の署名や記名押印があるか、会社が招集通知とともに送付した委任状が使われているか等から、総合的に正当な代理人かどうかを判断します。
また、定款に代理人を株主に限る定めがある場合に、株主ではない弁護士を代理人としてよいかは、個々の事案に応じ、裁判例の判断が分かれていますが、基本的には例外扱いせず弁護士も代理人として認めない例が優勢です。
イ 事前に委任状が会社に送付されていた場合の取扱い
会社に事前に委任状が送付されている場合も、上記と同様に、代理権の証明方法の定めがある場合はそれに従っているか確認します。
代理人を指定した委任状の場合は、当該代理人にて議決権行使させ、代理人を指定しない白紙委任の場合は、会社が代理人を指定し、当該代理人が議決権行使することになります。委任状に議案に対する賛否が記載されている場合には、代理人もその内容に従い議決権を行使します。
<続く>
「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」会社法を遵守した株主総会13-株主総会の運営に関する留意事項③-