「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」会社法を遵守した株主総会19-特殊な株主総会手続③-

3 バーチャル株主総会

2020年の新型コロナウイルス感染症の急速な拡大により、バーチャル株主総会を開催する上場企業が増加しています。2020年2月26日に経済産業省が公表した「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」による概要は以下のとおりです。

区分

内容

現行法での可否

① リアル株主総会

取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所で開催される株主総会

② ハイブリッド参加型バーチャル株主総会

リアル株主総会開催に加え、会場にいない株主もインターネット等の手段により審議等を確認・傍聴できる株主総会

③ ハイブリッド出席型バーチャル株主総会

リアル株主総会開催に加え、会場にいない株主がインターネット等の手段により株主総会に会社法上の「出席」ができる株主総会

④ バーチャルオンリー株主総会

リアル株主総会を開催することなく、取締役や株主がインターネット等の手段でのみ会社法上の「出席」をする株主総会

否と解釈

物理的な会場を設けない④バーチャルオンリー株主総会は現行法の解釈上難しいと考えられていますが、2023年開催の定時株主総会では、回答を得られた上場企業1979社のうち、ハイブリッド出席型を開催した上場企業は22社、ハイブリッド参加型を開催した上場企業は393社(株主総会白書2023年版・商事法務2344号)と、バーチャル株主総会の開催が拡大しています。

非上場企業においても、④バーチャルオンリー型を除くバーチャル株主総会は活用の余地があります。上場企業に比べ圧倒的に株主数が少なく、株主の顔も知っている場合には厳重な本人確認の必要性も低下するため、中小企業こそ低コストでバーチャル株主総会を実施できるともいえます。

②ハイブリッド参加型と③ハイブリッド出席型の違いは、②参加型は会場にいない株主は傍聴できるのみで、当日の議決権行使等はできないのに対し、③出席型は会場にいない株主もインターネット等の接続により、法律上も株主総会に「出席」したものとして、議決権行使や質問・動議等の提出が原則として可能であることです。

通常WEB会議が可能なインターネットサービスを利用して開催するため、通信環境の安定性や情報セキュリティ対策の確保は重要です。

開催する場合には、招集通知にバーチャル株主総会を開催する旨、参加型か出席型か、その他留意事項等を明記し、WEB会議のID・パスワードを記載して本人確認を行うことなどが考えられます。当日の質問や動議に対する対応方法も事前に確認しておく必要があるでしょう。

今後株主総会全般のデジタル化が進むと思われます。非上場会社において株主総会のデジタル化を行う場合には、実施に適するか否かや法律上の問題含め、事前にしっかりと検討と準備を行うことが肝要です。

<続く>

「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」会社法を遵守した株主総会20-過去の株主総会の瑕疵の治癒①-

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