事業承継④遺言・死因贈与による事業承継

□承継方法

・生前準備型

 ・遺言

現経営者が、株式・事業用資産を誰に承継させるかを遺言により定めておく方法です。

遺言がない場合、後継者に株式を集約するためには、後継者に株式を相続させる旨の遺産分割協議が整わなければなりません。それができなかった場合には、株式が相続人間に分散することとなりますし、仮に協議が整ったとしても、協議が整うまでの間、経営の安定が害されることとなります。

生前に後継者に株式を取得させる旨の遺言を作成しておくことで、こうした事態を回避することが可能となります。

事業承継に遺言を活用するメリットとしては、生前贈与や売買を利用する場合とは異なり、①相続が発生するまでの間、現経営者のもとに経営権をとどめておくことができる点、②相続開始前であれば、いつでも撤回や変更ができる点が指摘できます。

デメリットは、遺言の形式に不備があった場合や、遺言能力(有効に遺言を作成できる能力)の存否に疑念を抱かれた場合には、遺言の有効性を巡り法的紛争に発展するおそれがあることです。また、紛争の結果、遺言の有効性が認められたとしても、紛争の解決までには相応の時間がかかりますので、それまでの間、経営の安定性が害されることになります。

 ・死因贈与

現経営者が、死因贈与により、後継者に、事業を承継させる方法もあります。

具体的には、現経営者と後継者との間で、現経営者の死亡を条件として、現経営者の保有する株式・事業用資産を後継者に贈与する旨の契約を締結します。

そうすることで、遺言による場合と同様、現経営者が死亡した際に、後継者に株式等を承継させることが可能となります。

遺贈にはない死因贈与特有のスキームとしては、「負担付死因贈与」というものがあります。

これは、後継者が特定の義務・負担をまっとうすることを条件に死因贈与を約束するという契約を用いた手法です。

例えば、現経営者と同居して面倒をみることや、承継対象企業において勤続することといった負担を課すことが考えられ得ます。

もっとも、後継者が負担を履行したか否かについて相続人間で争いが生じる可能性があるため、負担付死因贈与を用いる場合には、契約書において負担の内容を具体的かつ明確に定めておく必要があります。

死因贈与のメリット・デメリットは、基本的には遺言と同様ですが、遺言ほどの厳格な形式は要求されていない点に特徴があります。

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