「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」株券9-株券発行会社における留意事項③

2 株券を喪失した場合の対応

(1)規律

ア 株券喪失登録の意義

株券発行会社においては、株式を譲渡する場合、株券の交付が効力発生要件とされていますので(会社法128条1項)、株券を喪失した株主は、有効な株式の譲渡を行うことができなくなります。また、株券には善意取得制度がありますので、喪失した株券を放置していた場合、第三者に当該株券を善意取得されてしまう危険性があります(会社法131条2項)。

そこで、会社法は、株券を喪失した者が、喪失株券(旧株券)を無効にし、有効な株券(新株券)を再発行するための手続として、株券喪失登録制度を設けました(会社法221条ないし会社法233条)。

すなわち、株券を紛失した者は、会社に対し、株券喪失登録手続を採ることによって、株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過した日に、当該株券を無効にすることができます(会社法223条、会社法228条1項)。

イ 株券喪失登録の手続

株券喪失登録手続は、請求者が株主名簿の名義人であるときは、自己の氏名(又は名称)、住所及び喪失した株券番号を明らかにするとともに、株券の喪失の事実を証する資料(盗難届証明書、罹災証明書等)を会社に提供して行います(会社法223条、会社法施行規則47条3項1号)。請求者が株主名簿の名義人ではないときは、これらに加え、株券を所持していたことを証する資料(株式譲渡契約書等)を提供しなければなりません(会社法223条、会社法施行規則47条3項2号)。

株券喪失登録請求(会社法223条)を受けた株券発行会社は、株券喪失登録原簿を作成し、①請求に係る株券の番号、②株券喪失者の氏名(又は名称)及び住所、③名義人の氏名(又は名称)及び住所、④株券喪失登録日を記載(又は記録)する必要があります(会社法221条)。

また、株券発行会社は、株券喪失登録請求者が、株式の名義人と異なるときは、遅滞なく、株式の名義人に対して、株券喪失登録をした旨並びに上記株券登録原簿記載事項の内①、②及び④の各事項を通知しなければなりません(会社法224条1項)。

株券喪失登録がされた株券は、同登録が抹消された場合(会社法225条、会社法226条)又は会社が株券発行会社でなくなることにより株券が無効となった場合(会社法227条)を除き、登録日の翌日から起算して一年が経過した日に無効となり、会社は、株券喪失登録者に対し、株券を再発行しなければなりません(会社法228条)。

ウ 株券喪失登録の効力

株券発行会社は、株券喪失登録がされた株券に係る株式については、同登録が抹消された日、あるいは株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過した日のいずれか早い日までの間は、株主名簿の名義書換をすることができません(会社法230条1項、会社法976条17号)。

また、株券発行会社は、登録抹消日後でなければ、株券喪失登録がされた株券を再発行することもできません(会社法230条2項)。

さらに、株券喪失登録者が株主名簿の名義人でない場合には、登録抹消日までの間、名義人である株主は、議決権を行使することができないとの制限が課されます(会社法230条3項)。

<続く>

「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」株券10-株券発行会社における留意事項④

ページトップへ戻ります