「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」株主名簿2-株主名簿の概要②
2 集団的法律関係の画一的処理のための制度
(1)対抗要件
株券不発行会社の株式の取得者は、株主名簿名義書換手続(会社法133条)を行わなければ、会社その他の第三者に対して、自らが株主であることを主張することができません(会社法130条1項)。
また、株券発行会社の株式の取得者(会社法128条参照)も、同手続を行わなければ、会社に対しては自らが株主であることを主張することができません(会社法130条2項)。
そのため、会社は、株主名簿の名義書換が未了の間は、例え株式譲渡の事実を知っていたとしても、株主名簿に記載された名義人を株主として取り扱うことで足ります(株主名簿の確定的効力)。
もっとも、株主平等の原則(会社法109条1項)に反しない限り、会社の責任において、名義書換未了の者を株主として取り扱うことは許されると解されています(最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁)。
(2)基準日制度
会社は、一定の日(基準日)を定めて、当該基準日において株主名簿に記載されている株主(基準日株主)を、権利を行使することができる者と定めることができ(会社法124条1項)、基準日株主が行使することができる権利(基準日から3ヶ月以内に行使するものに限る)の内容を定めなければなりません(会社法124条2項)。
実務上は、定款において事業年度末日を基準日と設定し、かつ当該事業年度末日から3ヶ月以内に定時株主総会を開催する旨を規定し、事業年度末日の最終の株主名簿上の株主に定時株主総会における議決権の行使や、これにより承認された剰余金の配当を受ける権利を与える扱いが一般的です。
なお、会社は、基準日株主が行使することができる権利が株主総会(又は種類株主総会)における議決権である場合には、基準日株主の権利を害さない限り、基準日後に株式を取得した者の全部又は一部の議決権行使を認めることができます(会社法124条4項)。
(3)株主に対する通知・催告と免責
株主への通知・催告は、株主名簿上の株主の住所(株主が別の場所・連絡先を通知した場合には当該場所又は連絡先)に宛てて発すれば、到達したものとみなされます(会社法126条)。
このように、会社法は、会社の便宜のため、集団的法律関係を会社が簡易・迅速に処理することができるよう、通知・催告に関する会社の免責を認めています。
また、同様に、配当財産の交付も、株主名簿上の株主の住所(又は株主が会社に通知した場所)において、交付すれば足ります(会社法457条1項)。