「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」株主名簿5-株主名簿を巡る対応①

1 株主名簿管理の重要性

中小企業では株主名簿に現在の株主構成を正しく反映していない場合や、そもそも株主名簿自体が作成されていないことがあります。

しかし、株主名簿の適切な管理は以下の理由で非常に重要です。

① 法的効力の享受

株主名簿が適切に作成されていることで、基準日制度などの各種法的効力(確定的効力、免責的効力)を会社が享受できる法的効力が発揮されます。株主名簿を作成していない場合には、会社は、これらの法的効力を享受できません。

② 株主等利害関係人からの責任追求の回避

株主名簿の管理は会社の法的義務です。会社が、株主名簿の作成を怠ったり、株主からの株主名簿の名義書換手続請求又は株主名簿閲覧謄写請求に対する対応を誤ること等で、結果的に株主等に損害を与えた場合には、会社や取締役は、当該株主等に対して、損害賠償責任を負う可能性があります(会社法350条、429条、民法709条、715条)。

③ 株式譲渡の円滑化                    

株主名簿は、株式譲渡やM&A等の際に、株主が誰であるかを把握するための最も基本的な資料です。株主名簿の杜撰な管理は、会社の信用を失墜させ、場合によっては株式譲渡のスキームによってM&Aを実行することができず、最悪の場合には取引そのものが破綻するリスクがあります。

④ 他分野での必要性

その他にも、商業登記実務上、役員の選解任等、登記すべき事項につき株主総会の決議を必要とする場合等には、添付書類として株主リストの提出が求められ、また法人税等確定申告書においては、別表二「同族会社等の判定に関する明細書」を作成する必要がありますが、これらの資料は、通常、株主名簿に基づき作成されますので、税務分野や登記分野においても、株主名簿の管理は不可欠です。

これらの理由から、株主名簿の整備と適切な管理が会社運営において重要な役割を果たします。

<続く>


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