相続の手引き51-超過特別受益者がいる場合
【事例】 Xの相続人は、配偶者A、子B、Cである。Xの相続財産は8000万円である。 BはXから4000万円の生前贈与を受けており、Cは1000万円の遺贈を受けていた。 |
⑴ 超過特別受益者の具体的相続分
上記事例で、民法903条1項に基づく具体的相続分の計算方法に従うと以下のようになります。
みなし相続財産:8000万円+4000万円=1億2000万円
A:1億2000万円×1/2(法定相続分)=6000万円
B:1億2000万円×1/4(法定相続分)-4000万円(生前贈与)
=-1000万円
C:1億2000万円×1/4(法定相続分)-1000万円(遺贈)
=2000万円
上記事例ではBの具体的相続分が-1000万円と算出されます。
民法903条2項は、「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。」と定めています。そのため、Bのような超過特別受益者は相続分を受けとることはできません。また、同項の反対解釈として、超過特別受益者が得た超過受益分を相続財産に持ち戻す必要はないとされています。よって、Bの具体的相続分は0となります。
⑵ その他の相続人の具体的相続分
上記事例で、現実には相続財産は8000万円しかないにもかかわらず、Aの相続分、Cの相続分及び遺贈分の合計は9000万円となり、相続財産が不足します。
このとき、-1000万円の不足を他の相続人がどのように負担すべきかが問題となります。
この点、実務上・学説上一致した見解はなく、主要なものとして①具体的相続分を基準とする説、②本来的相続分を基準とする説があります。各見解にしたがってA及びCの取得分を計算すると、以下のとおりとなります。
①具体的相続分を基準とする説
不足分を⑴で算出したA及びCの具体的相続分の割合で負担することになります。
A:6000万円-1000万円×{6000万円÷(6000万円+2000万円)}
=5250万円
C:2000万円-1000万円×{2000万円÷(6000万円+2000万円)}
=1750万円(別途遺贈分1000万円)
②本来的相続分を基準とする説
不足分をA及びCの本来的相続分の割合で負担することになります。
A:6000万円-1000万円×{1/2÷(1/2+1/4)}
=5333万3333円
C:2000万円-1000万円×{1/4÷(1/2+1/4)}
=1666万6667円(別途遺贈分1000万円)