相続の基礎知識⑦-法定相続人とその順位Ⅶ-
▎▎相続人になるか否かが問題となる特殊なケース
(1)内縁の妻
内縁の妻は、配偶者ではありませんので、法定相続人にはなりません。
そのため、被相続人が、内縁の妻に対して自分の遺産を譲りたい場合には、遺言書において、内縁の妻に対して遺贈する旨の記載をしておく必要があります。ただし、被相続人に法定相続人が存在する場合には、当該法定相続人に遺留分が認められるため、遺言の内容には注意する必要があります。
また、被相続人に相続人が存在しない場合には、内縁の妻が、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」、すなわち、特別縁故者として、家庭裁判所へ請求することによって、遺産の全部又は一部を譲り受けることができる場合があります(民法958の3)。
(2)認知していない子
世の中では、婚姻関係にない男女の子について、男(父)が子を認知しないケースがしばしばあります。男(父)が認知しなければ、両者に親子関係は生じないので、子が男(父)の相続人になることはありません。このような場合の対策として、子又はその法定代理人たる女が、男(父)に対して「認知の訴え」を提起し、強制的に認知させる方法があります(民法787)。
(3)胎児
胎児は、すでに生まれたものとして相続人となることができます(民法886①)。たとえば、夫と妻(妊娠中)の2人家族のケースで、夫が他界した場合は、胎児も相続人になるのです。ただし、死産の場合には、初めから相続人にならなかったものとして扱われます(民法886②)。
(4)外国人の相続
外国人が亡くなった場合の相続に、日本の民法が適用されるのか問題となります。この点、「法の適用に関する通則法36条」によると、相続は、被相続人の本国法によることになっているため、外国人の遺産の相続に、日本の民法は適用されません。
そのため、被相続人が外国人の場合は、被相続人の本国法を調査した上で、相続手続を進めていく必要があります。
<続く>
相続の基礎知識①-法定相続人とその順位Ⅰ-
相続の基礎知識②-法定相続人とその順位Ⅱ-
相続の基礎知識③-法定相続人とその順位Ⅲ-
相続の基礎知識④-法定相続人とその順位Ⅳ-
相続の基礎知識⑤-法定相続人とその順位Ⅴ-
相続の基礎知識⑥-法定相続人とその順位Ⅵ-
相続の基礎知識⑧-相続の承認と放棄Ⅰ-
相続の基礎知識⑨-相続の承認と放棄Ⅱ-
相続の基礎知識⑩-特別受益 相続時の持ち戻しⅠ-
相続の基礎知識⑪-特別受益 相続時の持ち戻しⅡ-
相続の基礎知識⑫-寄与分及び特別寄与料支払請求-
相続の基礎知識⑬-遺留分-
相続の基礎知識⑭-遺留分侵害額請求-
相続の基礎知識⑮-遺言の意義、効力-
相続の基礎知識⑯-遺言の種類-
相続の基礎知識⑰-遺言の変更と撤回-
相続の基礎知識⑱-相続する財産の範囲Ⅰ-
相続の基礎知識⑲-相続する財産の範囲Ⅱ-
相続の基礎知識⑳-遺言執行者の必要性とその役割及び選任方法-
相続の基礎知識㉑-遺産分割方法の指定-
相続の基礎知識㉒-相続分の指定Ⅰ-
相続の基礎知識㉓-相続分の指定Ⅱ-
相続の基礎知識㉔-遺贈Ⅰ 遺贈の意義-
相続の基礎知識㉕-遺贈Ⅱ 遺贈の担保責任-
相続の基礎知識㉖-遺贈Ⅲ 負担付遺贈-
相続の基礎知識㉗-相続人の廃除-
相続の基礎知識㉘-配偶者居住権Ⅰ-
相続の基礎知識㉙-配偶者居住権Ⅱ-
相続の基礎知識㉚-配偶者居住権Ⅲ-
相続の基礎知識㉛-配偶者居住権Ⅳ-
相続の基礎知識㉜-配偶者居住権Ⅴ-
相続の基礎知識㉝-配偶者居住権Ⅵ-
相続の基礎知識㉞-遺産分割に関する見直しⅠ-
相続の基礎知識㉟-遺産分割に関する見直しⅡ-
相続の基礎知識㊱-遺産分割に関する見直しⅢ-
相続の基礎知識㊲-遺産分割に関する見直しⅣ-
相続の基礎知識㊳-遺言制度に関する見直しⅠ-
相続の基礎知識㊴-遺言制度に関する見直しⅡ-
相続の基礎知識㊵-遺言制度に関する見直しⅢ-
相続の基礎知識㊶-遺言制度に関する見直しⅣ-
相続の基礎知識㊷-遺留分制度に関する見直しⅠ-
相続の基礎知識㊸-遺留分制度に関する見直しⅡ-
相続の基礎知識㊹-遺留分制度に関する見直しⅢ-
相続の基礎知識㊺-相続の効力等に関する見直し-
相続の基礎知識㊻-相続人以外の者の貢献を考慮するための方策-