相続の手引き㊺-特別受益の評価基準時について
【事例1】 Xには妻A、子B、Cがいる。 Bは、Xが死亡する10年前に、開業資金としてXから500万円の援助を受けていた。 |
【事例2】 Yには妻E、子F、Gがいる。 Yは、生前K社のオーナー社長をしており、Fを後継者とすべく、Yが死亡する5年前から1年前までにかけてK社の全株式を分割してFに対して生前贈与していた。 K社の業績はFが死亡する半年前までは安定していたが、その後悪化していた。 |
特別受益に当たる贈与は過去になされたものになりますので、当該贈与の目的物の価値は贈与時、相続開始時、遺産分割時で変動することがあります。そのため、特別受益の評価基準時をどの時点と解すべきかが問題となります。
この点、通説・判例は、当該贈与につき相続開始時の現状で評価して持ち戻すと解しています(最判昭和51年3月18日民集30巻2号111頁)。
上記事例1では500万円を相続開始時の貨幣価値に換算し、その価額を加算してみなし相続財産を算定します。上記事例2では、相続開始時のK社の株式評価額を算出し、その価額を加算してみなし相続財産を算定します。