相続の手引き㊻-贈与財産の滅失・価値の増減があった場合

【事例】

Xには、子A、Bがいる。

Zは、Aに対して甲建物を贈与した。Aは甲建物が耐震基準を満たしていなかったため、贈与を受けた後に耐震工事を実施した。

⑴ 受贈者の行為に起因する場合

受贈者が相続開始より前に贈与財産を損傷させたり改良したりした場合など、受贈者の行為により滅失又は価値の増減があった場合には、受贈者の行為による変化は無視します。すなわち、当該贈与財産が相続開始時点でも原状のまま存在するものと仮定して、相続開始時点での価額に換算して評価します(民法904条)。

上記事例では、甲建物が耐震工事をしないまま相続開始時に存在することを前提に、相続開始時の価値を評価し、その価額をAの特別受益として加算しみなし相続財産を算定します。

⑵ 受贈者の行為に起因しない場合

一方、贈与財産が不可抗力などの受贈者の行為以外の原因で滅失等した場合には、民法904条の反対解釈により、滅失した場合は贈与を受けなかったものとして、価値が増減した場合は相続開始時の時価によって算定すべきであると考えられます。

ただし、受贈者の行為によらずに贈与の目的物が滅失した場合でも、受贈者が滅失した財産に代わる代償財産を得ている場合には、代償財産の価額を評価して持戻しの対象とすべきとされています。

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