相続の基礎知識㉖-遺贈Ⅲ 負担付遺贈-
第1 はじめに
遺贈において受遺者に財産を取得させる条件として受遺者に負担を課すこともできます。
これを負担付遺贈というのですが、以下ではこの負担付遺贈についてみていくことにしましょう。
第2 負担付遺贈の意義
民法は、受遺者に一定の債務を負担させる遺贈を行うことを認めており、これを負担付遺贈といいます(民法1002条)。
例えば、被相続人には遺産として5000万円の価値がある家がある一方、その住宅ローンの残額が亡くなった時点で500万円だったとします。このような場合に、被相続人は、住宅ローンの残額を支払うかわりに家を遺贈するという内容の遺言を行うことができるのです。
第3 負担の範囲
負担付遺贈の場合、受遺者は、遺贈の目的物の価格を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負います(民法1002条1項)。
そのため、例えば夫が、子供に対して、自分の死後、妻に生活費として月25万円を支払う代わりに合計で500万円の価値のある土地建物を遺贈するとの負担付遺贈を行っていた場合に、子供が妻に対し毎月25万円の生活費を1年8か月間支払った時には、合計で遺贈の対象となった土地建物と同額である500万円の生活費を支払ったことから、それ以上妻に対して生活費を支払う必要がないことになります。
第4 受遺者が負担を果たさない場合
先の例で子供が妻と不仲であったために、妻に対して生活費を支払わない場合、夫の相続人である妻は、どのような手段をとることができるのでしょうか。
この場合、妻は、子供に対し、相当の期間を定めて生活費を支払うよう要求することができます。そして、その期間内に生活費の支払いがない場合には、負担付遺贈を定めた遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法1027条)。
そのため、子供が生活費を支払ってでも遺贈の対象となった土地建物を取得したいと思っている場合には、通常は負担付遺贈を行うことによって妻に対する生活費の支払いを確保することができるでしょう。
<続く>
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