相続の基礎知識㉛-配偶者居住権Ⅳ-

(7)居住建物の修繕等

 配偶者は居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができます。配偶者が相当な期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物所有者は修繕をすることができます。居住建物が修繕を要するとき、又は居住建物について権利を主張するものがあるときは、配偶者は居住建物所有者に対し遅滞なくその旨通知する必要があります(民法1033条)。もっとも、居住建物所有者が既にこれらの事情を知っているときは、通知する必要はありません(同条③ただし書)。

(8)居住建物の費用の負担

 配偶者は居住建物の通常の必要費を負担します(民法1034条①)。通常の必要費とは、固定資産税や通常の修繕費のことをいいます。通常の必要費以外の費用については、償還請求をすることができます(同条②、583条②)。

損害賠償及び費用償還請求については、期間が制限されており、居住建物所有者が返還を受けた時から1年以内に請求する必要があります(民法1036条、600条)。

(9)居住建物の返還等

 配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物に共有持分を有する場合を除き、居住建物を返還しなければなりません(民法1035条①)。配偶者が相続開始後に附属させた物がある場合、分離することができない物又は過分の費用を要する場合を除き、収去する必要があります(同条②、民法599条①)。また、居住建物に損傷が生じた場合には、通常損耗(例えば、日照等による畳の変色、家具の設置痕など、通常の使用方法によっても生じるであろう損耗のこと)や経年変化(耐用年数経過による設備の故障など)の場合を除き、原状回復義務を負います。ただし、配偶者の責めに帰することができない事由がある場合は原状回復義務を負いません(民法1035条②、621条)。

<続く>

相続の基礎知識①-法定相続人とその順位Ⅰ-

相続の基礎知識②-法定相続人とその順位Ⅱ-

相続の基礎知識③-法定相続人とその順位Ⅲ-

相続の基礎知識④-法定相続人とその順位Ⅳ-

相続の基礎知識⑤-法定相続人とその順位Ⅴ-

相続の基礎知識⑥-法定相続人とその順位Ⅵ-

相続の基礎知識⑦-法定相続人とその順位Ⅶ-

相続の基礎知識⑧-相続の承認と放棄Ⅰ-

相続の基礎知識⑨-相続の承認と放棄Ⅱ-

相続の基礎知識⑩-特別受益 相続時の持ち戻しⅠ-

相続の基礎知識⑪-特別受益 相続時の持ち戻しⅡ-

相続の基礎知識⑫-寄与分及び特別寄与料支払請求-

相続の基礎知識⑬-遺留分-

相続の基礎知識⑭-遺留分侵害額請求-

相続の基礎知識⑮-遺言の意義、効力-

相続の基礎知識⑯-遺言の種類-

相続の基礎知識⑰-遺言の変更と撤回-

相続の基礎知識⑱-相続する財産の範囲Ⅰ-

相続の基礎知識⑲-相続する財産の範囲Ⅱ-

相続の基礎知識⑳-遺言執行者の必要性とその役割及び選任方法-

相続の基礎知識㉑-遺産分割方法の指定-

相続の基礎知識㉒-相続分の指定Ⅰ-

相続の基礎知識㉓-相続分の指定Ⅱ-

相続の基礎知識㉔-遺贈Ⅰ 遺贈の意義-

相続の基礎知識㉕-遺贈Ⅱ 遺贈の担保責任-

相続の基礎知識㉖-遺贈Ⅲ 負担付遺贈-

相続の基礎知識㉗-相続人の廃除-

相続の基礎知識㉘-配偶者居住権Ⅰ-

相続の基礎知識㉙-配偶者居住権Ⅱ-

相続の基礎知識㉚-配偶者居住権Ⅲ-

相続の基礎知識㉜-配偶者居住権Ⅴ-

相続の基礎知識㉝-配偶者居住権Ⅵ-

相続の基礎知識㉞-遺産分割に関する見直しⅠ-

相続の基礎知識㉟-遺産分割に関する見直しⅡ-

相続の基礎知識㊱-遺産分割に関する見直しⅢ-

相続の基礎知識㊲-遺産分割に関する見直しⅣ-

相続の基礎知識㊳-遺言制度に関する見直しⅠ-

相続の基礎知識㊴-遺言制度に関する見直しⅡ-

相続の基礎知識㊵-遺言制度に関する見直しⅢ-

相続の基礎知識㊶-遺言制度に関する見直しⅣ-

相続の基礎知識㊷-遺留分制度に関する見直しⅠ-

相続の基礎知識㊸-遺留分制度に関する見直しⅡ-

相続の基礎知識㊹-遺留分制度に関する見直しⅢ-

相続の基礎知識㊺-相続の効力等に関する見直し-

相続の基礎知識㊻-相続人以外の者の貢献を考慮するための方策-

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