相続の基礎知識㉜-配偶者居住権Ⅴ-
3 配偶者短期居住権(民法1037条ないし1041条)
(1)配偶者短期居住権
配偶者は、相続開始時に被相続人の財産に属した建物に無償で居住していた場合には、以下の期間、居住建物(一部のみを使用していた場合はその部分)を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得します(民法1037条①)。
① 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合は、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日
(例)相続開始時1月1日(6か月経過する日=7月1日)、遺産分割成立時5月1日
→7月1までに配偶者短期居住権を取得
② ①以外の場合は(例えば、居住建物が第三者に遺贈された場合、配偶者が相続放棄した場合など)、居住建物の所有者による配偶者短期居住権消滅の申入れ(民法1037条③)の日から6か月を経過する日
ただし、配偶者が相続開始時に配偶者居住権を取得したとき、又は相続人の欠格事由(民法891条、例えば、被相続人を故意に殺害した場合や遺言書を隠した場合など)に該当し若しくは廃除によって相続権を失ったときは配偶者短期居住権を取得しません(民法1037条①ただし書)。
居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げることはできません(民法1037条②)
現行においても、配偶者が相続開始時に被相続人の財産に属した建物に居住していた場合には原則として被相続人と相続人との間で使用貸借契約が成立していたことが推認されます(最判平8・12・17判時1589号・45頁)。しかし、第三者に居住建物が遺贈された場合や被相続人が反対の意思表示をした場合には使用貸借が推認されず、配偶者の居住が保護されません。そこで、このような場合であっても配偶者を保護するために配偶者短期居住権が新設されました。
<続く>