相続の基礎知識㉝-配偶者居住権Ⅵ-
(2)配偶者による使用
配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならず、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることはできません(民法1038条①②)。これらに違反した場合には、居住建物取得者は配偶者短期居住権を消滅させることができます(同条③)。
配偶者が配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は消滅します(民法1039条)。
(3)居住建物の返還等
配偶者は、配偶者短期居住権が消滅したときは、配偶者が配偶者居住権を取得した場合又は居住建物に共有持分を有する場合を除き、居住建物を返還しなければなりません(民法1040条①)。
配偶者が相続開始後に附属させた物がある場合、分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する場合を除き、収去する必要があります(同条②、599条①)。また、居住建物に損傷が生じた場合には、通常損耗や経年変化の場合を除き、原状回復義務を負います。ただし、配偶者の責めに帰することができない事由がある場合は原状回復義務を負いません(民法1040条②、621条)。
(4)使用貸借等の規定の準用
配偶者短期居住権については、改正債権法、改正相続法の各規定の準用により、以下のとおり定められています(民法1041条)。
配偶者の死亡により、配偶者短期居住権は消滅します(民法597条③)。また、居住建物が全部滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、配偶者短期居住権は消滅します(民法616条の2)。
損害賠償及び費用償還請求については、期間が制限されており、居住建物所有者が返還を受けた時から1年以内に請求する必要があります(民法600条)。
配偶者短期居住権は、配偶者居住権と同様に、第三者に譲渡することができません(民法1032条②)。
配偶者短期居住権が定められている場合であっても、配偶者居住権と同様、配偶者は居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができます。配偶者が相当な期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物所有者は修繕をすることができます。居住建物が修繕を要するとき、又は居住建物について権利を主張するものがあるときは、配偶者は居住建物所有者に対し遅滞なくその旨通知する必要があります(民法1033条③)。もっとも、居住建物所有者が既にこれらの事情を知っているときは、通知する必要はありません(同条③ただし書)。
配偶者短期居住権が定められている場合であっても、配偶者居住権と同様、配偶者は居住建物の通常の必要費を負担します(民法1034条①)。通常の必要費とは、固定資産税や通常の修繕費のことをいいます。通常の必要費以外の費用については、償還請求をすることができます(同条②、583条②)。
<続く>