相続の基礎知識㊶-遺言制度に関する見直しⅣ-
5 遺言執行者の権限の明確化
従前、遺言執行者の権限について、必ずしも明確に定めていなかったことから、改正により明確化が図られています。また、従前は、遺言執行者はやむを得ない事由がなければ復任できないと定められていたところ、自己の責任で復任することができるようになりました。遺言執行者の権限に関する主な改正点は以下のとおりです。
① 遺言執行者は、任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知する必要があります(民法1007条②)。
② 遺言執行者がある場合は、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができます(民法1012条②)。
③ 遺言において、特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言があったときは、被相続人が遺言で別段の意思表示をしたときを除き、遺言執行者は対抗要件を具備するために必要な行為をすることができます。預貯金債権の場合は払戻し請求又は解約の申入れもできます(民法1014条)。ただし、解約の申入れについては、全部を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言がなされている預貯金債権に限られます(民法1014条③ただし書)。
④ 遺言執行者が権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対し直接効力が生じます(民法1015条)。
⑤ 遺言者が別段の意思表示をしたときを除き、遺言執行者は自己の責任で復任することができます(民法1016条①)。
<続く>