相続の基礎知識②-法定相続人とその順位Ⅱ-
▎▎代襲相続
また、誰が相続人になるのかを考える際には、代襲相続についても理解しておく必要があります。代襲相続とは、本来相続人となるはずであった子や兄弟姉妹が、相続の発生前に死亡などの理由により相続権を失ったときに、その人の子が、代わりに相続することを意味します(民法887②)。
(例)父、子、孫の3人家族のケースで、父が死亡する前に子が死亡した場合
→父が死亡した場合には、子の代わりに孫が代襲相続人となる
このように、本来相続人となるはずであった子の代わりに、孫が相続することを代襲相続といいます。もっとも、代襲相続が認められるのは、以下のとおり、法律上、一定の場合に制限されています。
(1)代襲原因
代襲相続が生じるのは、次の3つの事由によって相続権を失った場合に限られています(民法887②)。
- 相続開始前の死亡
- 相続欠格
- 相続廃除
ここでは、代襲原因に相続放棄が含まれていないことに注意する必要があります。
(例)父、子、孫の3人家族のケースで、父が死亡し、子が相続放棄した場合
→子の代わりに孫が相続人となることはできない
(2)代襲される者(被代襲者)
代襲される者(被代襲者)は、被相続人の子及び兄弟姉妹に限られています(民法887②、889②)。被相続人の配偶者や直系尊属が代襲されることはありません。
(3)代襲相続人
代襲相続人となるのは、被代襲者の子のみです(民法887②)。子が被代襲者となる場合は孫が代襲相続人となり、被相続人に子がおらず兄弟姉妹が被代襲者となる場合は兄弟姉妹の子、すなわち甥姪が代襲相続人となります。
また、被相続人の子の子(要するに「孫」)が代襲相続人となるためには、その子が被相続人の直系卑属でなければなりません(民法887②ただし書)。
(例)父、養子縁組した子、その子のもともとの連れ子のケースで、父が死亡する前に、子が死亡した場合
→父が死亡した場合であっても、連れ子は代襲相続人とならない。
例のようなケースでは、養親にとって連れ子は直系卑属に当たらないため、連れ子が代襲相続人となることはありません。
(4)再代襲
代襲相続人である孫が被相続人の死亡より先に相続権を失った場合、被相続人のひ孫に再代襲が認められています(民法887③、例1)。
他方、被相続人の兄弟姉妹の子(甥、姪)までは代襲相続が認められていますが、兄弟姉妹の孫については、再代襲は認められていません(民法889②、例2)。
(例1)子、孫が既に死亡していて、ひ孫がいるケースで、父が死亡した場合
→ひ孫が再代襲により相続人となる。
(例2)父、母、兄、兄の子が既に死亡していて、兄の孫がいるケースで、弟が死亡した場合
→兄の孫は、再代襲しないため、相続人にならない。
<続く>