相続法の概要⑪ ー配偶者居住権ー

1 配偶者居住権とは

配偶者は、相続開始時に被相続人の財産に属した建物に居住していた場合には、下記①②のいずれかに該当するときは、相続開始後もその居住建物の全部を無償で居住し続けられる権利(配偶者居住権)を取得します。ただし、被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には配偶者居住権を取得しません(民法第1028条第1項)。

 ① 遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき

 ② 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

なお、①の場合において、遺産分割は、相続人の協議によることが原則ではありますが、協議が進まないときには、共同相続人の請求によって、家庭裁判所が審判によって配偶者居住権を取得する旨を定めることができます。

配偶者居住権の存続期間は、原則として、配偶者の終身の間ですが、遺産分割協議もしくは遺言、又は遺産分割の審判において異なる期間とすることができます(民法第1030条)。

居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対して、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負っています。(民法第1031条第1項)。

そして、建物の所在地を管轄する法務局(登記所)において登記をすると、居住建物を第三者が取得したとしても、配偶者は居住建物に住み続けることができます。

 

2 配偶者居住権の使用収益権

配偶者は、居住建物に相続開始前と同じように無償で、居住建物に居住したり、転貸することができます(民法第1032条第1項)。しかし、居住建物の所有者の承諾がなければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物を使用させることはできません(民法第1032条第3項)。

また、配偶者居住権は第三者に譲渡できません(民法第1032条第2項)。

 

3 居住建物の修繕・費用の負担

配偶者は、居住建物に必要な修繕をすることができます(民法第1033条第1項)。また、配偶者は、居住建物の固定資産税や居住建物の保存に必要な修繕費などの居住建物の通常の必要費を負担しなければなりません(民法第1034条第1項)。

 

4 居住建物の返還

配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物に共有持分を有する場合を除き、居住建物を返還しなければなりません(民法第1035条1項)。配偶者は、配偶者の責めに帰することができない事由がある場合を除き、原状回復義務を負います(民法第1035条2項、第621条)。

ページトップへ戻ります